【2026年最新】オランダの移転価格文書化義務を徹底解説|マスターファイル・ローカルファイルの要件

オランダに進出している、あるいは進出を検討されている日系企業の皆様にとって、税務コンプライアンス、特に移転価格(Transfer Pricing)の文書化は避けて通れない課題です。

ネット上には古い情報が散見されますが、オランダでは2016年1月より、OECDの「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト」アクション13に基づいた厳格な義務が施行されています。本記事では、オランダ財務省の官報(Staatscourant 2015, 47457)および税務当局(Belastingdienst)の最新資料に基づき、実務上のポイントを詳しく解説します。

目次

1. 大前提:規模を問わず、すべての企業に文書化義務がある

まず押さえておきたい大前提があります。オランダでは、売上規模にかかわらず、関連者(グループ内の関連会社・親会社など)との取引を行うすべてのオランダ法人に、移転価格文書化の義務が課されています。

この義務の根拠は、1969年法人税法(Wet Vpb)第8b条です。同条は、関連者間の取引価格がアームズ・レングス原則(独立企業間原則)に基づいていることを証明する文書を、自社の行政記録として保管することをすべての納税者に義務付けています。

📌 「うちは中小だから関係ない」は通用しない
売上5,000万ユーロ未満の中小企業でも、日本親会社との取引(役務提供、商品売買、ロイヤリティ支払いなど)がある場合、第8b条に基づく文書化義務は生じます。書式の指定はありませんが、取引価格がアームズ・レングスであることを説明できる記録を常に備えておく必要があります。

その上で、グループの連結売上高に応じて、追加で求められる文書化の水準が段階的に上がります。これが次章で解説する「3つの柱」です。

2. 移転価格文書化の「3つの柱」

オランダの法律(1969年法人税法等)では、多国籍企業グループに対し、以下の3種類の標準化された文書の作成を義務付けています。これらは、グループ全体の事業実態と、各拠点で行われる取引の妥当性を証明するためのものです。

文書の種類 オランダ語名 / 英語名 概要
① 国別報告書 Landenrapport / CbC Report グループ全体の国別財務データを報告
② マスターファイル Groepsdossier / Master File グループ共通の事業・財務情報
③ ローカルファイル Lokaal dossier / Local File オランダ拠点固有の取引情報

3. 文書化義務が生じる「基準値」は?

自社にどの義務があるかは、「グループ全体の連結売上高」で判定されます。ここで重要なのは、オランダ拠点の売上高ではなく、日本親会社を含むグループ総額で判断される点です。

国別報告書(CbCレポート)提出・通知義務
€750M 以上
グループ連結売上高が7.5億ユーロ(約1,200億円)以上のグループが対象。提出義務と通知義務の両方が発生します。
マスター&ローカルファイルの作成・保管義務
€50M 以上
グループ連結売上高が5,000万ユーロ(約80億円)以上のグループが対象。両ファイルの作成と保管が必要です。

4. 日系企業に役立つ実務の「知恵袋」

① 作成言語は何語でよい?

オランダの規則では、全ての文書においてオランダ語または英語の使用が認められています。日本の親会社が英語でマスターファイルを作成している場合、そのままオランダの義務にも活用することが可能です。

② 確定申告時に提出する必要はある?

マスターファイルとローカルファイルは、確定申告時に一緒に提出するものではありません。「自社の行政記録の一部として保管(Local Administration)」しておく義務があり、税務当局から要求があった際に速やかに提示できる状態にしておく必要があります。

まとめ

オランダの移転価格文書化義務は、グループ連結売上高5,000万ユーロ以上(マスター・ローカルファイル)、7.5億ユーロ以上(国別報告書)という基準で義務が生じます。オランダ拠点の規模に関わらず、日本親会社を含むグループ全体の売上高が判断基準となる点に注意が必要です。

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【出典・参考資料】

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